技術講座

[GCの基本的理論]
ガスクロマトグラフィーについて
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[初級技術講座―1]
検出器特性による定性
ガスクロ用の検出器には様々種類があります。
分析試料に合わせて検出器を選択することは当然のことですが、測定対象成分の特性を加味すると、正確な定性と分析時間の短縮など、分析の効率を上げる事ができます。
ここでは環境分析を例にとって説明します。
環境省が規制する環境汚染物質の中で一番基本的なものは、揮発性有機塩素系化合物(VOC)で、これらは大気中、水中、土壌中と人の生活に密着して存在し ます。このグループは芳香族類と塩素化合物およびその分解生成物を含んでおり、これらの物質を如何に簡単且つ正確に測定することは極めて重要です。この分 析に対して、水素炎イオン化検出器(FID), 光イオン化検出器(PID), 乾式電気伝導度検出器(DELCD)の3種類の検出器を直列に接続して搭載したガスクロマトグラフを使用します。

【分析資料】    
 
【FID】はほとんど全ての物質に感度があり、検量線も直線範囲(ダイナミックレンジ)が広い為、ガスクロの検出器として最も一般的に使用されています。従って、この試料成分の全てに対し、感度があります。
SRI Model-30GC この分析に使用される標準試料はメタノールに溶解されています。従って最初に溶媒ピークが大きく検出され、そこに①1,1-DCEと②ジクロロメタンが重なって溶出され、定量は不可能です。⑦のピークには四塩化炭素、ベンゼン他が含まれています。  
【PID】で検出されたクロマトグラフです。    
On-column injector
PIDはメタノールに感度がありませんので1,1-DCEが、またFIDでは分離されていない⑥ベンゼンが単独ピークで測定できます。
【DELCD】で検出されたクロマトグラフです。  
On-column injector この検出器もメタノールに感度がない為、②ジクロロメタンが、また⑤四塩化炭素がベンゼンと別個に検出され、定量できます。
   
この3検出器による一斉分析は8分です。全成分の完全分離を必要とするシステムに比べ、ほぼ半分の時間で測定できます。 
 
≪おさらい≫
【FID】水素炎イオン化検出器は、ほとんどの有機物に感度があり、最も一般的に使用されている検出器で す。特にCHを持つ物質(炭素)に敏感で、ほぼ炭素数に比例した応答が得られ、検量線も直線範囲(ダイナミックレンジ)が広いユニバーサルな検出器です。 構造も簡素で、メンテも容易です。
ただし、HCHO, HCOOH, CS2等には感度がありませんので、ご注意ください。
【PID】光イオン化検出器は、各物質の持つイオン化ポテンシャルが10.6eV以下の全ての分子、芳香族類および炭素二重結合を持つ分子に感度があります。検出限界はppbレベルでFIDの10~100倍です。
【DELCD】乾式電気伝導度検出器は、塩素および臭素を含む化合物に対して選択的に感度を持つ検出器で す。カラムから溶出される反応生成物を気相中で検出する構造は、従来の電解液を使用する電気伝導度検出器に比べて、極めて取扱いが容易です。検出限界は ppbレベルで、ECD(電子捕獲検出器)と比較すると10~50倍ほど劣ります。
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