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ガスクロとは
世の中に存在する全ての物体は、様々な元素で構成されており、それを解明することは新しい物体の開発にも繋がるため、極めて重要な科学です。その一つがクロマトグラフィーで、混合物を構成する成分に分離・精製する手法です。その歴史は1906年にMichael
Tswettにより原理が発明されて以来、ペーパークロマト、薄層クロマトなど様々な技法が開発されてきましたが、現在ではカラムクロマトグラフィーが主流です。ここではガス及びガス化される試料の測定の為に開発された装置であるガスクロマトグラフについて説明いたします。
ガスクロマトグラフの原理・構造
不活性ガスを移動相(キャリヤーガスと呼ばれる)として使用し、そのガス流路に打ち込まれた試料を分離管(カラム)に送り、そこで分離されて検出器で測定される。
ガスクロマトグラフの選択あるいは構築に当たっては、試料形態及び分析目的に応じて下記項目につき検討しなければならない。
移動相:一般的にはヘリウム、水素、窒素、アルゴンなどの不活性ガスが使用されるが、空気を使用する場合もある。
キャリヤーガスは分析対象成分によって選択する必要がある。
【キャリヤーガス】を参照
注入口:注入口は試料形態、試料量、源泉などを考慮して選択する。
・試料形態:ガス体⇒クールオンカラム。 液体⇒加熱注入口
・試料量および濃度:ダイレクト注入、あるいは濃縮注入
・試料源泉:マニュアル注入、自動計量・注入
【注入口】を参照
分離管:カラムには大別してパックドカラムとキャピラリーカラムがある。
・パックドカラムは、内径2~3mmのガラス管あるいはステンレス管があり、必要に応じて
内面を不活性化処理したものが使用され、固定相が充填されている。
・キャピラリーカラムは内径0.1~0.53mmガラス、ステンレスあるいは溶融シリカの不活性処理した中空管を使用する。
そのカラム管の内面に液相を塗布して分離能をもたせてある。
【カラム】を参照
検出器:検出器には大別して、汎用と試料の特性に対応した特性対応型検出器がある。
汎用型:質量分析器(Mass Spectrophotometer)
準汎用型:熱伝導度検出器(TCD)、水素炎イオン化検出器(FID)など。
特性型:光イオン化検出器(PID)、電気伝導度検出器(ELCD),電子捕獲検出器(ECD), 炎光光度計(FPD)など。
【検出器】を参照
【キャリヤーガス】
ガスクロでは、カラムで分離された化合物の定性は、試料注入時からカラムより溶出されるまでの時間
(保持時間=リテンションタイム:各化合物により異なる)で決定される。従ってキャリヤーガスの流
速(線速度)は厳密に制御される。制御方式には圧力制御あるいは電子式制御器などがある。
キャリヤーガスは、対象成分との相性から分離能を考慮し、平均線速度曲線(Van Deemter)を参考に
して、また価格、入手難易度からキャリヤーガスを決める。
キャリヤーガスは、一般的に分析対象が有機化合物の場合は窒素、ヘリウムの不活性ガスが使用される。
ガス試料(無機ガス)の場合は、分析対象ガスと異なるキャリヤーガスを使用する。混合ガスの場合は
複数のキャリヤーガスを使用できる装置を選択する。キャリヤーガスを分析途中で切り替えるか、また
は並行して二系統のガス流路を持つ装置を使用する。検出器との関連もあるが、原則的には水素、ヘリ
ウム測定には窒素。酸素・窒素測定にはヘリウム
又は水素。それらの混合ガスの場合はアルゴンが使用される。
【注入口】
◆クールオンカラム:ガス試料にはガスタイトシリンジで0.1~3ml位まで、液体試料は液体シリンジで0.1~10ul を直接カラムに注入する。
試料注入量に限界があるため、低濃度試料には不向き。
◆加熱注入口:液体試料を注入口で瞬時に加熱・気化させてカラムに送るもので、気化しにくい試料に使用される。
この注入口は狭い注入口内で瞬時に気化させるため、急激な圧力変動を伴い、それを回避するためスプリット/スプリッタ―を組み込む。
そのため測定結果は実試料注入量で補正する必要がある。
◆SPME注入口:固相マイクロ抽出器で採取した化合物を熱脱離させる専用の注入口。
◆ガスサンプリングバルブ:ロータリーバルブに計量管を取り付け、試料注入量を厳密に制御する。
プラントのガス配管から直接試料を取り込むモニターに応用できる。
◆気体濃縮注入法(TDU):気体中の低濃度化合物を測定するため、大量の試料を吸着管(トラップ管)に吸着させた後、加熱して化合物を脱離し
カラムに移送するシステムである。大気中のベンゼン、トルエン、キシレンなどをppbレベルで検出できる。
◆水試料濃縮注入法(パージ&トラップ):水中の低濃度化合物を測定するため、大量(~20ml程度)の試料をパージ管内で曝気し、吸着管(トラップ管)に
吸着させた後、加熱して化合物を脱離しカラムに移送するシステムである。水中のベンゼン、トルエン、キシレン、トリハロメタンなどをppbレベルで検出で
きる。
◆ヘッドスペースサンプラー:試料容器中の気相部分ガスを採取し分析する。気液平衡理論に基づく。
【分離管:カラム】
カラムには、分離機構により吸着型と分配型、また形状により充填カラム(パックド)とキャピラリーカラムがある。種々ある化合物を分離するためには分析
対象物質に適したカラム形状、材質、固定相、液相を選択しなければならない。
◆パックドカラム:カラム管に固定相が充填されている。
▲カラム管にはガラスあるいはステンレス管の内壁を不活性処理したものが使用され、長さ(0.5~3mが標準)と内径(2~3mmが標準)の仕様がある。
▲固定相
吸着型固定相
・モレキュラーシーブ5A、13X、Hayesep-Dなどのゼオライト。
水素、酸素、窒素、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素などの分離、
・シリカゲル;低級炭化水素、二酸化炭素の分離などに適している。
酸素、窒素、メタン、エタン、二酸化炭素、エチレン、アセチレン
他に、活性炭、活性アルミナ、ポーラスポリマーなどがある。
分配型固定相 担体に液相をコーティングしたもの。
・担体:珪藻土に炭酸カルシウムを混ぜて焼成した白色系とレンガを焼いて粉砕したピンク系がある。他に、ガラスビーズ、グラファイトカーボンなども
使用される。
◆キャピラリーカラム;液相をカラム管内壁に直接塗布したもの。カラム管の内壁は不活性処理され、液相は化学結合されて耐久性を保持されている。
カラムは、管の材質、内径、長さ、液相、液相の膜厚により仕様が決められている。
・管材質:ステンレス フューズドシリカ 硬質ガラス(折れやすく実用的でない)
・分配型液相
無極性;100%ジメチルポリシロキサン;OV-1 OV-101 SE-30
微極性;5%フェニル;OV-5
中極性;しアノプロピル;OV-17
極 性;Carbowax-20M、PEG
カラムの表示:《液相名x長さx内径x膜厚》 例:フューズドシリカ OV-1 30m 0.53mm 0.5umDF
・吸着型カラム;PLOTは無機ガスや低級炭化水素を分離できる。
【検出器】
昨今のガスクロは、ガスクロ‐質量分析計(GC-MS)のシステムが主流をとなっているが、ガスクロの特徴の一つは、検出器の多様性であり、その特性を生かした定性は極めて高い精度がある。
日々の製品管理などのルーチンワークには、手頃な価格で、操作が容易、維持管理・保守点検に手間のかからない専用ガスクロがのコスト-パーフォーマンスにメリットがある。
検出器の種類 |
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・TCD | 熱伝導度検出器 | 汎用。無機ガス(ガス試料一般) | ||
・FID | 水素炎イオン化検出器 | 汎用。炭化水素 有機化合物 | ||
・ELCD(DELCD) | 電気伝導度検出器(気相) | 塩素、臭素化合物 | ||
・PID | 光イオン化検出器 | 芳香族(BTEX) | ||
・HID | ヘリウムイオン化検出器汎用(ネオン以外) | |||
・CCD | 触媒燃焼検出器 | |||
・FPD | 炎光光度検出器 | 硫化物(硫化水素、硫化カルボニル) | ||
・NPD | 窒素燐検出器 | 農薬(窒素系、燐系農薬) | ||
・RGD | 還元ガス検出器 | 還元ガス(水素、一酸化炭素) | ||
・ASD | 芳香族検出器 | 芳香族 ・・ |
詳細は、下記URLを参照
http://www.technointer.com/New-gc-5.html