ペリスタルティックポンプ(チューブポンプ)の特徴と採水の操作手順
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このページでは、日本では現場用の採水ポンプとして、あまり使われていないペリスタルティックポンプ(蠕動送液ポンプまたはチューブポンプともいう)について、現場における操作の手順を以下の文献を参考にして、概要をご紹介しています。
ペリスタルティックポンプは低流量で安定して連続揚水できる非常に優れた特性を持っているポンプです。
地下水(または湖沼等の水域からの水試料)採取のための操作手順
- ポンプのローター部(ヘッドとも言う)で駆動するチューブのリークの有無と、ローター部(ヘッダーや回転部とも言う)の破損の確認。
- ローター部にチューブを接続する。
- 井戸孔内に挿入するサンプリングチューブ先端に、フートバルブ(逆流防止弁)を接続する。またはフートバルブが接続されているチューブを準備・用意する。(このポンプは地上部で真空吸引しますので、サンプリングチューブ内の水が下に落ちないようにするこの弁をつけると、その分の吸引に対する負荷が軽減されます。)
- また必要ならば、サンプリングチューブの先端にステンレススチールのおもりを付ける。(特に2インチ(5.01cm)の井戸では)効果がある。)
- サンプリングチューブ内に呼び水を入れる。最も簡単な方法は、サンプリングチューブ先端にはフートバルブが接続させているため、対象水域または井戸孔内でサンプリングチューブを上下させることで、容易にサンプリングチューブ内に同質の水を満たすことが可能。なお井戸孔内の場合は、孔内水の乱れに注意すること。
- 所定深度(サンプリングする深度)までサンプリングチューブを井戸に挿入する。ローター部のチューブとサンプリングチューブが一体ではない(同一のチューブ)場合、井戸挿入後にローター部のチューブと接続する。
- 筆者注)現場で利用するペリスタルティックポンプは、ローター部のチューブの交換と設定が、容易にできるタイプをご利用されるようお薦めします。
- 特定の帯水層中からの深度の水を採水したい場合、井戸の孔径は12インチ(30.48cm)よりも細いこと。
- 水質測定用のフローセルをインラインで設置する場合には、ポンプとサンプリング口までの間に三方コックを接続し、排水のためのラインを設ける。
- サンプリングチューブと、ローター部のチューブを接続する。
- ポンプを稼働させる。ポンプの回転速度は、井戸孔内水位を大きく低下させない(0.3フィート(9.1cm))速度にする。ポンプの揚水系が真空になり、濁りが収まるまでの間、揚水は排水する。極端な濁りが消えた後、孔内水位の測定に加え、水質の計測を始める。
- 筆者注)水質と水位の安定指標は、低量揚水による地下水試料採取の考え方 を参照ください。
- 孔内水位とpH等の水質が安定したのを確認した後、試料採取を開始する。
- サンプルビンに採取し、保存と運搬のための処理を行う。
ペリスタルティックポンプの利点・特徴
- 小口径の井戸(例えば2インチ(5.1cm)以下)でも採水可能
- 浅い水深(例えば数cm)でも、採水できる可能性がある
- 採取する試料が、サンプリングチューブ以外に触れる事はない
- 操作が容易
- 揚水量のコントロールが可能
- ポンプ部品等の除染操作が必要ない(ただしサンプリングチューブは井戸ごとに交換する必要はある)
- 無機試料の採取も可能
ペリスタルティックポンプの欠点・短所
- 採水可能深度は気圧によって異なるが、おおむね25フィート(7.62m)まで
- 揮発物質のポテンシャル損失は、負圧の増加量による。半揮発性(semivolatile)と空気から影響を受ける物質は、このサンプラーでは採取できない。例えば、DO、pH、二酸化炭素や鉄についての関連する形態(carbon dioxide or iron and its associated forms)は、正確なデータまたは再現性のあるデータは得られない。
- この特性から、低量サンプリング(low-flow purging)をすべての場合の試料採取として行えないかもしれない。
このポンプは、地上から水の吸引を行うものです。例えて言うなら、長いストローで、井戸や湖沼の水を吸い上げているようなものです。この点から考えれば、採水する目的の水質分析項目への適応性を判断することができます。例えば最も不適切な分析項目は、溶存ガスを対象とする分析のための採水であることがわかります。溶存ガスの水中での濃度は、水のポテンシャル(深度ではありません)と、ガスの分圧との比によって決まりますので、吸引する力によって、試料水のポテンシャル値(ここでは圧力)を変化させるこのチューブポンプは用いることができません。
以上
更新日:2016年12月3日