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このページはあまり日本国内でなじみのないパッシブサンプラーによる採水方法の特徴を示し、地下水(井戸孔内水)の採水計画の一助となることを目的としています。このページの内容は、下記の文献を引用・参考し、簡単にご理解いただけるように和訳の上、日本国内の事情を考慮し、加筆したものです。
またこのページ最下段には、インターネットで無料で受講できるビデオ学習も載せていますので、ご参考下さい。
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地下水の採取は、通常、帯水層中の水を、井戸(観測井など)を利用し、その井戸の中から採取(採水)することにより行われています。井戸の中の水は、スクリーン区間(日本ではストレーナー区間とも言う)から、帯水層中の水の供給を受けています。このスクリーン区間において、井戸孔内の水と帯水層の水が平衡状態にあるならば、井戸孔内の水は帯水層の水と同一であると考えることができます。このため、採水を行うための揚水を行う必要がなく、井戸孔内の水だけを採取することで、地下水の評価をすることができます。
この、井戸孔内の水と帯水層の水が平衡状態にあるという条件が満たされている場合において、井戸孔内水の採水をおこなうのが、パッシブサンプリングです。
パッシブサンプラーによる採水は、揚水により、井戸周囲の帯水層中の水を井戸孔内に人為的に導くのではなく、帯水層との「平衡」状態にあることを利用して、1) 時間をかけて試料採取(対象物質だけを井戸孔内で抽出)する、または 2) 平衡となっている水を静かに採水する、これら2つの方法があります。
すなわち、パッシブサンプリングを行うためには、事前に、採水する井戸孔内の区間内の水が、調査対象物質に対して、帯水層と「平衡状態」となっていることを確認、または妥当に推定できている必要があります。この点が満たされていた場合に限って、本サンプラーによる採水が可能となります。
井戸孔内から揚水後に採水するのであれば、パッシブサンプリングを行う必要はありません。
パッシブサンプリングによる水質評価は、帯水層中の対象物質について、静置経過を把握することが主目的となります。
ただし、パッシブサンプラーを井戸孔内に長期間おいておきますと、帯水層と井戸孔内水の出入りの阻害となり、「平衡状態」が維持されません。
パッシブサンプラーの一般的特徴
パッシブサンプラーの一般的欠点
市販されているパッシブサンプラーは、大きく分けて3種類あります。
このうち当社では、Grabタイプ(井戸孔内水をそのまま採取するタイプ)を2種類取り扱っています。
当社で取り扱っているパッシブサンプラーは、Grabタイプの以下2つの製品です。
HydraSleeve™ | SNAP Sampler™ | |
概要 | ||
採取区間よりも下部までサンプラーを沈め、採取時に引き上げることで口が開き、さらに引き上ると孔内水がそのまま袋に入っていく。沈めるときにはサンプラーは水圧により閉じているため、ベーラーのように内部を他深度の孔内水は通過しない。口に逆止弁の付いた物もある。複数のサンプラーを吊すことで、同時に複数深度の採水が可能。 | バンドーン式採水器の小型版の様なサンプラー。ガラス容器(40mL)またはより大きいPE容器に直接採水でき、蓋をセプタム付きのものを利用すれば、そのまま分析器のオートサンプラーにて分析設置可能。蓋を閉じる内部のバネは、SSにテフロンコーティングしたもの。蓋を閉じるきっかけは、孔口から紐を引くか、または電磁弁。複数のサンプラーを吊すことで、同時に複数深度の採水が可能。 | |
採水容器の材質 | ポリエチレン | ガラス ポリエチレン |
採水対象 | 液体、地下水、表流水、タンク内水 | 地下水、表流水 |
分析対象物質:VOCs | すべて対応 | すべて対応 |
分析対象物質:SVOCs | すべて対応 | すべて対応 |
分析対象物質:金属類 | すべて対応 | すべて対応 |
分析対象物質:陰イオン | すべて対応 | すべて対応 |
分析対象物質:野外測定(pH,ORP,EC,DO,水温,濁度) | すべて対応 | すべて対応 |
分析対象物質:爆発物(訳者注:TNTやDNT等) | すべて対応 | すべて対応 |
分析対象物質:過塩素酸塩類(Perchlorate) | すべて対応 | すべて対応 |
分析対象物質:六価クロム | すべて対応 | すべて対応 |
分析対象物質:Oxygenates(MtBE) | すべて対応 | すべて対応 |
HydraSleeve™ | SNAP Sampler™ | |
利点 | すべての物質に対応 高価でなく、使い捨てタイプ 揚水の必要なし 試料採取は瞬間的(連続した揚水ではない) |
すべての物質に対応 揚水の必要なし 試料は水中で封される 試料の移し替えの必要なし 試料採取は瞬間的(連続した揚水ではない) |
限界 | 容器が用意されたもののみで、自由に採取長さまたは容量を設定できない | 容器が用意されたもののみで、自由に採取長さまたは容量を設定できない |
考察 | 簡便 一人で操作可能 |
組み立てと分解が必要 使用前に要練習 使用前に要除染(ただし対象井戸専用品を除く) |
試料容量 | 1〜2Lが標準。他もある。 | ガラス:40mL、 ポリエチレン:125mL, 350mLがある。 |
HydraSleeve™ | SNAP Sampler™ | |
Grab式 | Grab式 | |
除染 | 必要なし(使い捨てタイプ) | 必要ある(ただし同一井戸専用を除く) 容器を使い捨てる場合は必要なし |
試料運搬 | 採水試料を試料ビンに移し替える必要がある 運搬は各種規格で決められたとおり行う |
試料はそのまま運搬できる容器に封入される 運搬は各種規格で決められたとおり行う |
以上
更新日:2011年10月14日