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パッシブサンプリングの特徴(利点と欠点)

水質調査を行う場合の採水方法の1つであるパッシブサンプラー(Passive groundwater sampler)の特徴

 このページはあまり日本国内でなじみのないパッシブサンプラーによる採水方法の特徴を示し、地下水(井戸孔内水)の採水計画の一助となることを目的としています。このページの内容は、下記の文献を引用・参考し、簡単にご理解いただけるように和訳し加筆したものです。
 またこのページ最下段には、インターネットで無料で受講できるビデオ学習も載せていますので、ご参考下さい。

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パッシブサンプラーとは

 地下水の採取は、帯水層中の水を、一般的には井戸(観測井など)の中から採取することをにより行われています。井戸の中の水は、スクリーン区間(日本ではストレーナー区間とも言う)から、帯水層中の水の供給を受けています。このスクリーン区間において、井戸孔内の水と帯水層の水が平衡状態にあるならば、揚水を行わずに、すなわち孔内の攪拌を伴わずに、この水だけを採取することができます。
 パッシブサンプラーは、揚水をして井戸周囲の帯水層中の水を、井戸孔内に人為的に導くのではなく、帯水層との「平衡」にあることを利用して、1) 時間をかけて試料採取(対象物質だけを現場で抽出)する、または 2) 平衡となっている水を静かに採水する、これら2つの方法があります。
 従って、採水する区間内の水は、調査対象物質に対して、「平衡状態」となっていることを確認、または妥当に推定できていることが、本サンプラーの使用の前提条件となります。

パッシブサンプラーの一般的特徴

パッシブサンプラーの一般的欠点

市販されているパッシブサンプラーは、大きく分けて3種類あります。

  1. 吸着と収着によって、サンプラー内に対象物質を蓄積するもの:水中暴露期間中の合計濃度(単位時間あたりの水中暴露量で評価)
  2. 膜の透過によって、サンプラー内に対象物質を蓄積するもの(通称PDB(Passive Diffusion Bag)タイプ):水中暴露期間中の合計濃度(単位時間あたりの水中暴露量で評価)
  3. 井戸孔内の水をそのまま採取する(Grabタイプ):採取した瞬間の濃度が得られる

このうち当社では、Grabタイプ(井戸孔内水をそのまま採取するタイプ)を2種類取り扱っています。


当社で取り扱っているパッシブサンプラーの特徴と比較

 当社で取り扱っているパッシブサンプラーは、Grabタイプの以下2つの製品です。

採水器の概要と調査対象

HydraSleeve™ SNAP Sampler™
概要 hydrasleevehydrasleeve SnapSamplerSnapSampler
 採取区間よりも下部までサンプラーを沈め、採取時に引き上げることで口が開き、さらに引き上ると孔内水がそのまま袋に入っていく。沈めるときにはサンプラーは水圧により閉じているため、ベーラーのように内部を他深度の孔内水は通過しない。口に逆止弁の付いた物もある。複数のサンプラーを吊すことで、同時に複数深度の採水が可能。  バンドーン式採水器の小型版の様なサンプラー。ガラス容器(40mL)またはより大きいPE容器に直接採水でき、蓋をセプタム付きのものを利用すれば、そのまま分析器のオートサンプラーにて分析設置可能。蓋を閉じる内部のバネは、SSにテフロンコーティングしたもの。蓋を閉じるきっかけは、孔口から紐を引くか、または電磁弁。複数のサンプラーを吊すことで、同時に複数深度の採水が可能。
採水容器の材質 ポリエチレン ガラス
ポリエチレン
採水対象 液体、地下水、表流水、タンク内水 地下水、表流水
分析対象物質:VOCs すべて対応 すべて対応
分析対象物質:SVOCs すべて対応 すべて対応
分析対象物質:金属類 すべて対応 すべて対応
分析対象物質:陰イオン すべて対応 すべて対応
分析対象物質:野外測定(pH,ORP,EC,DO,水温,濁度) すべて対応 すべて対応
分析対象物質:爆発物(訳者注:TNTやDNT等) すべて対応 すべて対応
分析対象物質:過塩素酸塩類(Perchlorate) すべて対応 すべて対応
分析対象物質:六価クロム すべて対応 すべて対応
分析対象物質:Oxygenates(MtBE) すべて対応 すべて対応

 


利点と限界

HydraSleeve™ SNAP Sampler™
利点 すべての物質に対応
高価でなく、使い捨てタイプ
揚水の必要なし
試料採取は瞬間的(連続した揚水ではない)
すべての物質に対応
揚水の必要なし
試料は水中で封される
試料の移し替えの必要なし
試料採取は瞬間的(連続した揚水ではない)
限界 容器が用意されたもののみで、自由に採取長さまたは容量を設定できない 容器が用意されたもののみで、自由に採取長さまたは容量を設定できない
考察 簡便
一人で操作可能
組み立てと分解が必要
使用前に要練習
使用前に要除染(ただし対象井戸専用品を除く)
試料容量 1〜2Lが標準。他もある。 ガラス:40mL、 ポリエチレン:125mL, 350mLがある。

 


利便性

HydraSleeve™ SNAP Sampler™
Grab式 Grab式
除染 必要なし(使い捨てタイプ) 必要ある(ただし同一井戸専用を除く)
容器を使い捨てる場合は必要なし
試料運搬 採水試料を試料ビンに移し替える必要がある
運搬は各種規格で決められたとおり行う
試料はそのまま運搬できる容器に封入される
運搬は各種規格で決められたとおり行う

 


その他の参考文献

以上


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更新日:2011年10月14日

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